冬の「茶かぶきジェラート体験」

近は滅多に積もらない京都の雪景色。

そこはかとない風情を醸し出す街で、古の文化人がたしなん だ体験を楽しむひとときが何よりたまらない。
暖かい部屋の中で「茶かぶき(利き茶)」をジェラート で楽しむ。
世界でもここだけでしか体験できないそうだ。

そもそも「茶かぶき」とは、南北朝(1336~1392)の頃に 「闘茶」と呼び、京都を舞台に文化人の遊びとして流行 した。
当時、栄西禅師から明恵上人に受け継がれた京都 栂尾の一帯(現在の高雄周辺(梅ヶ畑))の抹茶を「本茶」としていたため、「本茶」か他産地の「非茶」かを飲み分けることが始まりだそう。

やがて、「かぶく(遊ぶ)」という風俗が歌舞伎芝居の名を生み、「茶歌舞伎」、さらに「茶香服」になり娯楽遊戯として素人の間に流行した。
現在では玉露2種、煎茶3種を用い、それぞれの茶に花 ・鳥・風・月・客と名前をつけて熱湯をさし、90秒た ったもので飲み分けるという。

そんなきき茶をなぜにジェラートで?
抹茶の本当の美味しさを知って欲しい。
スイーツのみならずドリンクや料理など、その範囲も様々に抹茶は使用されている。

しかし、その大半の商品が値ごろ感やお求め安い価格帯の商品であり、原料の抹茶には安価なものしか使用でき ないという。
「抹茶は苦いから嫌い」そうおっしゃる消費者の方も、実はたくさんおられるそうだ。
それは、本当のお茶の美味しさを経験していないからだとい う。

だから、本当の抹茶のおいしさを知ってもらいたくて、素材である抹茶にこだわり、その抹茶を活かす製法にこだわり、そして、香りまで楽しんでいただくために食べ方までこだわったそう。

そして、この「茶かぶきジェラート体験教室」でお茶のおいしさと、種類による味わいの違いを食べることで楽しみながら感じられるようになったという。

「違うということが判ることで少しでも本物の味わい に興味を持ってくだされば、私たちはとっても幸せです」 真剣な表情の中に、はにかむ様な笑顔が現れた。
しかし、ジェラートで本当に違いがわかるのだろうか?

「イタリアでは牛乳を使用していて もミルクっぽくなく、 素材の味がはっきりとしています。
当店は、昔イタリアの貴族が食べたであろうジェラートをめざし、作り続けてきました。
また、53歳の時に単身ローマへ渡り、昔ながらのジェラートやお菓子の製法を学校で学んできました。
主席・満点で課程を修了し、ディプロマをもらって帰国後は、京都ならではの素材や感性を用いて現在のジェラートを作り上げました。
だからひと口食べるだけで濃密、違いがわかるんです。」
だから茶かぶきをジェラートで体験することで、より抹茶の違いがわかるということだ。

ジェラート・ベネのジェラ ートだからできるもので、だからこそ世界で唯一の体験と言えるのだろう。
これはマダム教子が創業当初よりずっと守り続けてきた、○手作り  ○本物 ○無添加 ○身体に良い というモットーから生まれたものだそう。
京都老舗のジェラート店だけに、その歴史も美味しさの秘密といえるのかもしれない。

マダム教子は「食べることで奉仕する」という精神のもと、様々な新しいスタイルを提案し続けてきた。
今でこそ当たり前のように存在するお酒たっぷりの大人限定スイーツは、「男のパフェ」として2001 年に水野真紀さんオススメでananに掲載された。
また、丸かぶりのお寿司をスイーツで表現する「丸かぶりジェラート」は本物の寿司海苔を巻いたもので、2005年にKBS京都で生放送された。
また、1990年に発売したお饅頭型のジェラートにお干菓子をあしらった「京乃暦」 はその後も進化を続け、お客様に「食べるのがもったいな い」と言われるほどの工芸ジェラートとして現在も人気がある。
このように単なるジェラートではなく、ジェラー トで表現する新たなスタイルといえるものだろう。

そし て、新たに「火にかけ炊いて飲むジェラート」も。
茶かぶきをジェラートで楽しんだ後、残しておいたジェラートを火にかけ、炊いていただく。
お茶の香ばしい香りが広がり、濃厚な抹茶ラテのような味わいが口の中いっぱいに、やさしく染み渡ってゆく。

何とも贅沢な冬の京都。
冷たいジェラートなのに、心温まる体験に幸せな気分でお店を後にした。
観光名所をめぐる旅も素敵だが、このように隠 れ家のようなお店でここでしか味わえない体験を味わう旅も、これからは楽しみになってゆくだろう。
京都市左京区 ジェラート・ベネ TEL:075-723-2414
(文:亀屋嘉右衛門 写真提供:ジェラート・ベネ)